借入金はどれくらいなら大丈夫?返済と会社に残るお金の見方を税理士がやさしく解説
【経営数字の見える化シリーズ|第8回】
「借入金が増えてきたけれど、このままで大丈夫なのかな」
「銀行から借りられると言われたけれど、本当に借りても大丈夫?」
「利益は出ているはずなのに、毎月返済するとお金が残らない」
このように感じたことはありませんか?
会社を経営していると、設備投資や仕入れ、人材採用、新店舗の出店など、まとまったお金が必要になることがあります。
そんなときに活用されるのが、金融機関からの借入です。
しかし、借入金があること自体が悪いわけではありません。
大切なのは、「いくら借りているか」ではなく、「何のために借りて、無理なく返せて、返したあとも会社にお金が残るか」を見ることです。
この記事では、借入金はいくらまでなら大丈夫なのか、返済で確認したいこと、会社にお金を残すための考え方を、経営者様向けにやさしく解説します。
後半では、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」の数字を使って、具体的に確認していきます。
この記事でわかること
・借入金はいくらまでなら大丈夫なのか
・借入金を金額だけで判断してはいけない理由
・毎月の返済で確認したいこと
・利益が出ていてもお金が減る理由
・売上規模と借入金のバランスを見る方法
・借入前に確認したいポイント
・借入後に毎月確認したい数字
先に結論
借入金に「○万円までなら大丈夫」という一律の答えはありません。
同じ1,000万円の借入金でも、会社の売上規模や利益、毎月の返済額、現金預金によって負担の大きさは違います。
借入金を見るときに大切なこと
・何のために借りたのか
・毎月いくら返済するのか
・返済したあとも会社にお金が残るか
・借入によって売上や利益が増えるのか
借入金は、「金額」だけではなく、「返済後にお金が残るか」まで確認することが大切です。
1 借入金は悪いものではありません
借入金という言葉を聞くと、「できるだけ借りない方がいい」と思う方もいるかもしれません。
しかし、会社経営では、借入を上手に活用することで成長につながる場合があります。
・新しい機械を購入する
・店舗を増やす
・新しい従業員を採用する
・大量の仕入れが必要になる
・新規事業を始める
手元資金だけでこれらを行うと、会社のお金が大きく減ってしまうことがあります。
そこで、必要な資金の一部を借入で調達し、手元のお金を残しながら事業を進める方法があります。
借りないことが正解なのではなく、返せる範囲で目的を持って借りることが大切です。
2 借入金を見るときは「何のために借りたか」を確認する
借入金が増えたときに、最初に確認したいのは借入の目的です。
設備投資のための借入
新しい機械を購入し、製造量を増やす、作業時間を短縮する、新しい商品を作るための借入です。
この場合は、設備投資によって今後の売上や利益が増えるかを確認します。
運転資金のための借入
仕入れ、人件費、家賃など、日々の事業を運営するためのお金です。
大切なのは、借りたお金が何に使われ、その結果、会社がどう良くなるのかを説明できることです。
3 借入金を見るときに確認したい5つの数字
① 売上高
会社の売上規模を確認します。同じ借入額でも、売上規模によって負担感は変わります。
② 利益
本業から返済のためのお金を生み出せているかを確認します。
③ 現金預金
利益があっても現金がなければ返済はできません。手元資金も重要です。
④ 毎月・年間の返済額
借入残高だけでなく、毎月いくら返すのかを確認します。
⑤ 借入金残高
現在いくら借入金が残っているのかを、他の数字と一緒に確認します。
4 「売上規模に対して借入金は多い?」を確認する方法
借入金の金額だけでは、多いか少ないか判断しにくいですよね。
そこで、売上規模とのバランスを見るために、借入金が1か月分の売上の何か月分あるかを確認する方法があります。
この指標を「借入金月商倍率」といいます。
たとえば、年間売上高が3,600万円、借入金が600万円の場合。
計算例
1か月の平均売上:3,600万円 ÷ 12 = 300万円
600万円 ÷ 300万円 = 2.0か月分
何か月なら大丈夫?
ここで「2か月なら安全なの?」と思いますよね。
しかし、○か月以下なら安全、と一律には判断できません。
会社の利益率や現金預金、返済期間によっても状況は変わります。
前年・前々年と比較し、借入金が増えた理由や、借入後に売上・利益が増えているかを確認することが大切です。
5 利益が出ているのに「返済が苦しい」のはなぜ?
「決算書では利益が出ているのに、なぜ銀行返済をするとお金が残らないの?」
その理由は、利益とお金は同じではないからです。
売上が計上されてもまだ入金されていない場合や、設備投資、在庫の増加、借入返済などによって会社のお金は減ります。
ここが大切
「利益が出ているから大丈夫」ではなく、返済したあとに現金が残るかまで確認しましょう。
6 借入金で注意したい5つのサイン
6-1 借入金が増えているのに利益が増えていない
設備投資などのために借入をしたのであれば、その投資によって売上や利益が増えているか確認します。
6-2 毎月返済すると現金預金が減る
返済後に毎月のお金が減り続けている場合は注意が必要です。
6-3 返済のために新しい借入をしている
設備投資や成長のためではなく、「今月の返済をするために借りる」という状態が続く場合は、資金繰り全体を見直しましょう。
6-4 売掛金や在庫が増えている
売上が増えても、売掛金の回収前や在庫のままでは、現金は会社に戻ってきません。
6-5 利息負担が増えている
借入金には利息がかかります。借入額、金利、返済期間、毎月返済額まで確認しましょう。
7 借入する前に確認したいこと
「金融機関から借りられる」ことと、「会社が無理なく返せる」ことは同じではありません。
・何のために借りるのか
・必要額はいくらか
・毎月の返済額はいくらか
・年間返済額はいくらか
・借入後も現金預金を確保できるか
・投資によって売上や利益はいくら増える予定か
・計画より売上が少なかった場合でも返済できるか
特に設備投資では、「設備を買えるか」ではなく、「設備を買ったあとも経営を続けられるか」まで確認することが重要です。
8 借入後は「資金繰り表」で確認する
借入金がある会社にぜひ作っていただきたいのが、資金繰り表です。
資金繰り表では、月ごとに売上代金の入金、仕入・人件費・税金・設備投資・借入・返済などを整理します。
これにより、3か月後、6か月後に会社にいくらお金が残る予定なのかを確認できます。
9 具体例|株式会社あわらベーカリーの場合
ここからは、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」の数字を使って確認してみましょう。
本記事では、決算書の読み方をわかりやすく説明するため、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」のサンプル数値を使用します。実在する企業の決算数値ではありません。また、税金や会計処理は、説明しやすいように一部簡略化しています。
9-1 3期分の数字
第3期
売上高:24,000,000円
営業利益:1,160,000円
現金預金:1,800,000円
借入金:5,100,000円
純資産:2,600,000円
第4期
売上高:30,000,000円
営業利益:2,000,000円
現金預金:2,500,000円
借入金:3,980,000円
純資産:3,870,000円
第5期
売上高:36,000,000円
営業利益:2,000,000円
現金預金:2,200,000円
借入金:6,130,000円
純資産:5,060,000円
9-2 売上規模と借入金を比べてみる
第3期
5,100,000円 ÷ 2,000,000円
約2.6か月
第4期
3,980,000円 ÷ 2,500,000円
約1.6か月
第5期
6,130,000円 ÷ 3,000,000円
約2.0か月
第4期までは借入金の負担が小さくなっていましたが、第5期に再び増えています。
9-3 第5期は「なぜ借入金が増えたのか」を確認する
第4期から第5期にかけて、借入金は398万円から613万円へ増えています。
しかし、借入金が増えたからといって、すぐに悪い状態とは判断しません。
たとえば、新しい製造設備を購入したのであれば、将来の売上を増やすための投資かもしれません。
9-4 現金預金も一緒に見る
第4期から第5期では、現金預金が250万円から220万円へ減っています。
一方で、借入金は増えています。
さらに、営業利益は200万円から200万円で増えていません。
ここから、「売上は増えているけれど、利益やお金が十分に増えていない」可能性が見えてきます。
9-5 純資産は増えている
一方、純資産は260万円、387万円、506万円と毎年増えています。
このように、借入金だけで会社を判断しないことが重要です。
売上・利益・現金預金・借入金・純資産を一緒に見ることで、会社の状態がよりわかりやすくなります。
10 あなたの会社は大丈夫?借入金チェックリスト
□ 現在の借入金残高を把握していない
□ 毎月の返済額を把握していない
□ 年間でいくら返済しているかわからない
□ 借入した理由を説明できない
□ 借入後の売上や利益を確認していない
□ 利益は出ているのに現金預金が減っている
□ 返済すると毎月ほとんどお金が残らない
□ 売掛金や在庫が増えている
□ 半年後の現金残高を予測していない
□ 設備投資前に資金繰りを確認していない
11 よくある質問
借入金は少ない方がいいですか?
必ずしもそうとは限りません。必要な設備投資や成長投資をすべて自己資金で行うことで、かえって会社の現金が少なくなる場合もあります。
借入できる金額なら借りても大丈夫ですか?
「借りられる金額」と「無理なく返せる金額」は同じではありません。毎月の返済額、利益、現金預金、今後の投資予定などを確認して判断することが大切です。
利益が出ていれば借入金は返せますか?
利益が出ていても、現金が不足する場合があります。返済可能かどうかは、資金繰りまで確認しましょう。
設備投資で借入する前に何を見ればいいですか?
設備投資額、借入額、毎月返済額、現在の現金預金、投資後の売上予測、投資後の利益予測を確認しましょう。
12 まとめ|借入金は「返したあとにお金が残るか」まで確認しよう
借入金は、会社の成長を支える大切な資金調達手段です。
借入金があること自体が問題なのではありません。
・何のために借りたのか
・現在いくら残っているか
・毎月いくら返済しているか
・年間でいくら返済するのか
・利益はいくら出ているか
・返済後に現金が残るか
「借入金はいくらまでなら大丈夫?」という質問に対する答えは、会社によって違います。
だからこそ、借入金の金額だけではなく、売上・利益・返済額・会社に残るお金を一緒に見ることが大切です。
次回は、「資金繰り表って何?会社のお金を先読みする方法」について、経営者様向けにやさしく解説します。
佐々木美有税理士事務所では、月次決算や数字の見える化を通じて、経営者様が会社の状態を早めに確認できる環境づくりをサポートしています。
「借入しても大丈夫か確認したい」
「毎月返済しているのに、なぜお金が残らないのかわからない」
「設備投資をする前に、会社のお金を確認したい」
「金融機関へ相談する前に数字を整理したい」
このようなお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
あわら市・坂井市を中心に、オンラインでのご相談にも対応しております。
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