人件費率とは?計算方法・適正な考え方・改善方法を経営者向けに解説
決算書・数字の見える化

人件費率とは?計算方法・適正な考え方・改善方法を経営者向けに解説

【経営数字の見える化シリーズ|第7回】

「売上は増えているのに、人件費も増えて利益が残らない」

「従業員を増やしたいけれど、本当に採用して大丈夫なのかわからない」

「自社の人件費は高いのか、低いのか判断できない」

このようなお悩みはありませんか?

人件費は、会社を運営するうえで欠かせない経費です。

従業員を採用することで、売上の増加やサービスの向上、経営者の負担軽減につながることがあります。

一方で、売上や粗利益に対して人件費が大きくなりすぎると、会社に利益が残りにくくなります。

そこで確認したいのが、人件費率です。

この記事では、人件費率の計算方法や見方、適正な考え方、人件費率が高くなる原因、改善方法を経営者様向けにわかりやすく解説します。

後半では、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」の数字を使って、人件費率の変化を具体的に確認します。

この記事でわかること

・人件費率の意味と計算方法

・売上高人件費率と労働分配率の違い

・人件費率が高くなる主な原因

・人件費を一律に削減してはいけない理由

・人件費率を改善するための具体的な方法

・従業員を採用する前に確認したい数字

人件費率とは、売上高や粗利益に対して、人件費がどれくらいかかっているかを見る割合です。

売上高人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100
粗利益に対する人件費率 = 人件費 ÷ 売上総利益 × 100

ただし、適正な人件費率は、業種、事業内容、従業員数、会社の成長段階によって異なります。

人件費率が高いからといって、すぐに給与や従業員数を減らせばよいわけではありません。

大切なのは、人件費の増加が売上や利益につながっているか、従業員一人あたりの生産性が上がっているかを確認することです。

1 人件費率とは

1-1 人件費に含まれるもの

人件費というと、従業員へ支払う給与だけをイメージする方も多いかもしれません。

しかし、会社が負担する人件費には、一般的に次のようなものが含まれます。

・給料手当

・賞与

・役員報酬

・法定福利費

・福利厚生費

・退職金

・通勤手当

・採用費や教育費

人件費率を計算するときは、何を人件費に含めるかを毎回統一することが大切です。

ある月は給与だけ、別の月は法定福利費まで含めるという計算方法では、正しく比較できません。

毎月同じ基準で計算し、前年同月や計画と比べましょう。

1-2 売上高人件費率の計算方法

売上高人件費率は、売上高に対して人件費がどれくらいかかっているかを見る割合です。

売上高人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100

たとえば、1か月の売上高が300万円、人件費が90万円の場合は、次のようになります。

計算例

90万円 ÷ 300万円 × 100 = 30%

この場合、売上高の30%が人件費として使われていることになります。

計算しやすく、毎月の推移を確認しやすいことが特徴です。

ただし、原価の高い業種と低い業種では、同じ人件費率でも意味が異なります。

そのため、売上高人件費率だけでなく、粗利益との関係も確認する必要があります。

1-3 労働分配率の考え方

労働分配率は、会社が生み出した付加価値のうち、どれくらいを人件費として従業員へ分配しているかを見る割合です。

労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額 × 100

付加価値額の計算方法には複数ありますが、中小企業の経営管理では、わかりやすく粗利益を使って確認することがあります。

人件費 ÷ 売上総利益 × 100

たとえば、売上総利益が180万円、人件費が90万円の場合は、次のようになります。

計算例

90万円 ÷ 180万円 × 100 = 50%

売上高人件費率は売上高に対する割合ですが、労働分配率は会社が生み出した利益の源泉に対する割合です。

人件費の負担を確認するときは、粗利益との関係を見る方が、実際の経営状態を把握しやすい場合があります。

2 人件費率を確認する理由

2-1 売上が増えても利益が残らない原因を確認できる

売上が増えると、仕事量も増えることがあります。

その結果、従業員の採用、勤務時間の増加、残業、外注の利用などにより、人件費も増えます。

人件費の増加以上に売上や粗利益が増えていれば、会社の成長につながっている可能性があります。

一方で、売上や粗利益の増加よりも人件費の増加が大きければ、利益は残りにくくなります。

「人件費が増えた」という金額だけを見るのではなく、売上高や粗利益に対する割合で確認することが大切です。

2-2 採用してよいか判断する材料になる

従業員を一人採用すると、毎月の給与だけでなく、社会保険料や交通費、備品、採用費、教育費なども発生します。

そのため、月給だけを見て採用できるか判断するのは危険です。

採用前に確認したいこと

・採用後の年間人件費

・採用により増やせる売上や粗利益

・教育にかかる期間

・人件費を支払える現金預金

・売上が計画どおり増えなかった場合の資金繰り

採用によってすぐに売上が増えるとは限りません。

入社後、仕事を覚えて生産性が上がるまでの期間も考慮する必要があります。

2-3 人員配置や業務効率を見直せる

人件費率が高くなっている場合、従業員の給与が高すぎるとは限りません。

次のような原因も考えられます。

・仕事量に対して人員が多い

・手作業や二重入力が多い

・担当者に仕事が偏っている

・忙しい時間帯と人員配置が合っていない

・利益につながりにくい業務に時間を使っている

・教育不足により作業時間が長くなっている

人件費を減らす前に、業務の流れや人員配置を見直すことが大切です。

3 人件費率が高くなる主な5つの原因

3-1 売上や粗利益が減っている

人件費の金額が変わっていなくても、売上や粗利益が減ると人件費率は上がります。

たとえば、人件費が毎月100万円で変わらなくても、売上高が400万円から300万円へ減れば、売上高人件費率は上昇します。

人件費率が上がったときは、最初に人件費だけでなく、売上高や粗利益が減っていないか確認しましょう。

3-2 売上の増加以上に人件費が増えている

事業拡大を見込んで先に人を採用した場合、一時的に人件費率が上がることがあります。

これは必ずしも悪い状態ではありません。

ただし、一定期間が経過しても売上や粗利益が増えなければ、採用計画や人員配置を見直す必要があります。

採用後に確認したいこと

・担当できる業務が増えたか

・経営者の作業時間が減ったか

・対応できる顧客数が増えたか

・残業や外注費が減ったか

・売上や粗利益が増えたか

3-3 残業や休日出勤が増えている

売上が増える繁忙期には、残業代や休日出勤手当が増えることがあります。

一時的な増加であれば問題にならない場合もあります。

しかし、毎月残業が続いている場合は、人員不足、業務の属人化、作業工程の無駄などが隠れている可能性があります。

単純に残業時間を減らすだけでなく、なぜ残業が発生しているのかを確認することが重要です。

3-4 業務が非効率になっている

紙資料からの転記、複数のExcelへの二重入力、承認の待ち時間、同じ内容の確認作業などが多いと、売上に直接つながらない時間が増えます。

人件費率を改善するためには、従業員に無理をさせるのではなく、業務そのものを効率化することが大切です。

・クラウド会計を導入する

・請求書や経費精算をデジタル化する

・定型業務を自動化する

・業務マニュアルを作成する

・重複している作業をなくす

3-5 利益率の低い仕事が増えている

売上は増えていても、手間がかかる割に利益が少ない仕事が増えると、人件費率は高くなります。

たとえば、次のような場合です。

・低価格の仕事が増えた

・追加対応を無料で行っている

・少額の注文に時間がかかっている

・利益率の低い商品が増えた

・顧客ごとの対応時間に差がある

売上高だけではなく、商品別・サービス別・顧客別に、粗利益と作業時間を確認しましょう。

4 人件費率を改善するための方法

4-1 人件費を一律に削減しない

人件費率が高いからといって、すぐに給与や従業員数を減らすのはおすすめできません。

人件費を減らすことで、従業員の負担が増えたり、サービスの品質が下がったりする可能性があります。

さらに、退職者が増える、採用が難しくなる、売上が減るといった影響も考えられます。

改善するときは、まず人件費の金額ではなく、売上や粗利益に対して人件費がどのように変化しているかを確認しましょう。

4-2 粗利益を増やす

人件費率を改善する方法は、人件費を減らすことだけではありません。

粗利益を増やすことでも改善できます。

・販売価格を見直す

・利益率の高い商品を増やす

・利益率の低い仕事を見直す

・値引きのルールを決める

・仕入価格を見直す

・追加サービスを有料化する

売上を増やすだけでなく、どれくらい粗利益が残るかを確認することが大切です。

4-3 業務を見える化する

人件費率を改善するには、誰が、どの業務に、どれくらい時間を使っているかを把握します。

正確な時間管理が難しい場合は、まず1週間だけ記録してみる方法もあります。

・顧客対応

・製造や作業

・移動

・入力や集計

・確認作業

・会議

・手待ち時間

業務別に分けてみると、改善できる作業が見つかりやすくなります。

4-4 ITやクラウドサービスを活用する

毎月繰り返す定型業務は、ITやクラウドサービスを活用することで作業時間を減らせる場合があります。

・会計ソフトと銀行口座を連携する

・請求書をオンラインで発行する

・経費精算をクラウド化する

・勤怠管理をデジタル化する

・予約や問い合わせ対応を自動化する

新しいシステムを導入する際は、導入費用だけでなく、削減できる時間と人件費も確認しましょう。

4-5 毎月の推移を確認する

人件費率は、決算時だけでなく、毎月確認することが大切です。

毎月並べたい数字

・売上高

・売上総利益

・人件費

・売上高人件費率

・粗利益に対する人件費率

・営業利益

前年同月や予算と比較することで、変化の原因に早く気づけます。

5 決算書の具体例|株式会社あわらベーカリーの場合

ここからは、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」の数字を使って、人件費率の変化を確認します。

本記事では、決算書の読み方をわかりやすく説明するため、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」のサンプル数値を使用します。実在する企業の決算数値ではありません。また、税金や会計処理は、説明しやすいように一部簡略化しています。

5-1 3期分の売上高・粗利益・人件費

株式会社あわらベーカリーの数字は、次のとおりです。

第3期

売上高:24,000,000円

売上総利益:14,400,000円

給料手当:3,000,000円

法定福利費:600,000円

人件費合計:3,600,000円

第4期

売上高:30,000,000円

売上総利益:17,400,000円

給料手当:4,200,000円

法定福利費:800,000円

人件費合計:5,000,000円

第5期

売上高:36,000,000円

売上総利益:20,160,000円

給料手当:5,400,000円

法定福利費:1,000,000円

人件費合計:6,400,000円

5-2 売上高人件費率を確認する

第3期

3,600,000円 ÷ 24,000,000円

15.0%

第4期

5,000,000円 ÷ 30,000,000円

約16.7%

第5期

6,400,000円 ÷ 36,000,000円

約17.8%

売上高は毎年増えていますが、売上高人件費率も15.0%から約17.8%へ上昇しています。

つまり、売上高の増加以上に、人件費の負担が大きくなっていることがわかります。

5-3 粗利益に対する人件費率を確認する

第3期

3,600,000円 ÷ 14,400,000円

25.0%

第4期

5,000,000円 ÷ 17,400,000円

約28.7%

第5期

6,400,000円 ÷ 20,160,000円

約31.7%

粗利益に対する人件費率も、25.0%から約31.7%へ上昇しています。

粗利益の金額は増えていますが、それ以上に人件費が増えている状態です。

5-4 数字から何を確認するか

人件費率が上がったからといって、採用が失敗だったとは限りません。

新しい従業員が仕事を覚える途中であれば、一時的に人件費率が高くなることもあります。

あわらベーカリーで確認したいこと

・従業員を増やしたことで製造量が増えたか

・経営者の作業時間が減ったか

・営業時間や販売機会が増えたか

・残業や外注費が減ったか

・新しい設備と人員を十分に活用できているか

・店舗販売と卸販売のどちらに人手がかかっているか

・商品別の粗利益と作業時間が合っているか

数字の増減だけで判断せず、その背景を確認することが大切です。

6 自社の人件費を確認するチェックリスト

次の項目で、当てはまるものがないか確認してみましょう。

□ 売上は増えているが、営業利益が増えていない

□ 人を増やしたが、売上や粗利益が増えていない

□ 毎月の人件費率を計算していない

□ 残業や休日出勤が増えている

□ 経営者や一部の従業員に仕事が偏っている

□ 手作業や二重入力が多い

□ 利益の少ない仕事に時間がかかっている

□ 採用前に資金繰りを確認していない

□ 商品別・顧客別の作業時間を把握していない

□ 人件費の増加理由を説明できない

複数当てはまる場合は、人件費の削減を考える前に、売上・粗利益・業務時間・人員配置を整理してみましょう。

7 まとめ|人件費率は会社の成長と一緒に確認しよう

人件費率は、売上高や粗利益に対して、人件費がどれくらいかかっているかを見る割合です。

売上高人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100
粗利益に対する人件費率 = 人件費 ÷ 売上総利益 × 100

適正な人件費率は、業種や事業内容、会社の成長段階によって異なります。

そのため、他社の数字だけで判断するのではなく、自社の過去の数字や計画と比較することが大切です。

また、人件費率が高いからといって、人件費を一律に削減するのではなく、粗利益を増やす、業務を効率化する、人員配置を見直すといった方法を検討しましょう。

人件費は、単なる経費ではありません。

適切に使うことで、売上の増加、サービスの向上、経営者の負担軽減、会社の成長につながる大切な投資です。

次回は、借入金の見方と返済負担を確認する方法について詳しく解説します。

佐々木美有税理士事務所では、月次決算や数字の見える化を通じて、経営者様が会社の状態を早めに確認できる環境づくりをサポートしています。

あわら市・坂井市を中心に、オンラインでのご相談にも対応しております。

「従業員を採用しても大丈夫か確認したい」

「人件費が利益を圧迫していないか見てほしい」

「毎月確認すべき数字を整理したい」

このようなお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

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