売上が増えても利益が増えない5つの理由|経営者が確認したい数字と改善策
決算書・数字の見える化

売上が増えても利益が増えない5つの理由|経営者が確認したい数字と改善策

【経営数字の見える化シリーズ|第5回】

「売上は去年より増えているのに、利益が思ったほど増えていない」

「以前より忙しくなっているのに、会社にお金が残らない」

「売上を増やせば、利益も自然に増えると思っていた」

このように感じていませんか?

売上が増えることは、会社にとって良い変化のひとつです。

しかし、売上が増えたからといって、利益も同じように増えるとは限りません。

原材料費や仕入価格、人件費などが売上以上に増えていれば、売上が伸びても利益は残りにくくなります。

この記事では、売上が増えても利益が増えない主な原因と、経営者様が確認したい数字、利益を残すための改善方法をわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • ・売上が増えても利益が増えない主な原因
  • ・決算書で最初に確認したい数字
  • ・利益を残すための具体的な改善方法
  • ・売上・原価・経費を確認する順番
  • ・実際の数字を使った分析の考え方

売上が増えても利益が増えない主な理由は、次の5つです。

1.原材料費や仕入価格が上がっている

2.利益率の低い商品や取引が増えている

3.人件費やその他の経費が増えている

4.販売価格の見直しが追いついていない

5.設備投資により減価償却費が増えている

利益の基本的な考え方は、次のとおりです。

売上 − 原価や経費 = 利益

売上が増えても、原価や経費が同じか、それ以上に増えれば利益は増えません。

大切なのは、売上高だけを見るのではなく、増えた売上からどれくらい利益が残っているかを確認することです。

1 売上が増えても利益が増えない主な5つの理由

1-1 原材料費や仕入価格が上がっている

売上が増えても利益が増えない理由のひとつが、原材料費や仕入価格の上昇です。

商品を作るための材料や、販売する商品の仕入価格が上がると、同じ価格で販売していても、1つの商品から残る利益は少なくなります。

たとえば、300円で販売している商品の材料費が100円から130円に上がったとします。

※表は横にスクロールできます

項目 値上がり前 値上がり後
販売価格 300円 300円
材料費 100円 130円
販売価格から材料費を引いた金額 200円 170円

販売価格が変わらなければ、1個あたりに残る金額は30円少なくなります。

販売数が増えて売上が伸びていても、1個あたりに残る利益が減っていれば、会社全体の利益は思ったほど増えません。

確認したいポイント

  • ・仕入単価がどれくらい上がったか
  • ・商品ごとの原価がどれくらい増えたか
  • ・販売価格に反映できているか
  • ・代わりに使える材料や仕入先があるか
  • ・内容量や提供方法を見直せないか

1-2 利益率の低い商品や取引が増えている

売上が増えているときは、何の売上が増えたのかを確認する必要があります。

同じ売上金額でも、商品や販売先によって残る利益は異なります。

たとえば、直接お客様に販売する場合と、他社へ卸売りする場合では、販売価格や手数料が異なることがあります。

利益率の低い商品や卸販売が増えると、会社全体の売上は増えても、利益は増えにくくなります。

売上の内訳として確認したい項目

  • ・商品別の売上高
  • ・商品別の原価
  • ・商品別の粗利益
  • ・販売先別の売上高
  • ・店舗・卸・ネットなど販売方法別の利益

売上の大きい商品が、必ずしも利益の大きい商品とは限りません。

売上額だけでなく、商品や取引ごとにどれくらい利益が残っているかを見ることが大切です。

1-3 人件費やその他の経費が増えている

売上が増えると、仕事量も増えることがあります。

その結果、従業員を増やしたり、勤務時間を長くしたりすることで、人件費が増える場合があります。

また、事業が広がることで、次のような経費も増えやすくなります。

  • ・水道光熱費
  • ・配送費
  • ・広告宣伝費
  • ・消耗品費
  • ・支払手数料
  • ・外注費
  • ・車両費

これらの経費が売上の増加以上に増えると、利益は残りにくくなります。

人件費や広告費を増やすこと自体が悪いわけではありません。

大切なのは、その経費が売上や利益の増加につながっているかを確認することです。

1-4 販売価格の見直しが追いついていない

原価が上がっているのに販売価格を据え置いていると、利益率は下がります。

値上げをすると、お客様が離れるのではないかと心配する経営者様も多いと思います。

しかし、原価が上がっているのに価格を見直さなければ、売れても利益は残りにくくなります。

  • ・利益率の低い商品から価格を見直す
  • ・内容量や提供方法を見直す
  • ・高付加価値の商品を増やす
  • ・セット販売を取り入れる
  • ・原材料や仕入先を見直す
  • ・配送費や手数料を別に設定する

1-5 設備投資により減価償却費が増えている

新しい機械や設備を購入すると、減価償却費が増えることがあります。

減価償却費とは、設備の購入金額を使用する期間に分けて経費にするものです。

設備を導入すると、作業効率や生産量が上がることがありますが、導入直後は利益が増えにくいこともあります。

設備投資後に確認したいこと

  • ・製造量が増えたか
  • ・作業時間が短くなったか
  • ・人件費の増加を抑えられたか
  • ・売上や利益につながっているか
  • ・借入金の返済に無理がないか

2 売上が増えても利益が増えないときに確認したい数字

2-1 売上高だけで判断しない

売上高は大切な数字ですが、それだけでは利益の状態まではわかりません。

売上が増えたときは、次の数字もあわせて確認しましょう。

  • ・売上高
  • ・売上原価
  • ・売上総利益
  • ・粗利益率
  • ・人件費
  • ・営業利益
  • ・現金預金

売上高の増加額と、原価や経費の増加額を比べることで、利益が増えない原因を探しやすくなります。

2-2 売上総利益と粗利益率を確認する

売上が増えても利益が増えないときは、まず売上総利益と粗利益率を確認します。

売上総利益 = 売上高 − 売上原価
粗利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

売上総利益の金額が増えていても、粗利益率が下がっている場合は、売上に対して利益が残りにくくなっている状態です。

2-3 営業利益と営業利益率を確認する

営業利益は、本業でどれだけ利益を出せたかを見る数字です。

営業利益 = 売上総利益 − 販売費及び一般管理費
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

売上が増えているのに営業利益率が下がっている場合は、人件費やその他の経費が増えている可能性があります。

2-4 人件費や経費の増加を確認する

次に、人件費や主要な経費を前年と比較します。

  • ・給料手当
  • ・法定福利費
  • ・地代家賃
  • ・水道光熱費
  • ・広告宣伝費
  • ・外注費
  • ・減価償却費
  • ・その他経費

単に増えたかどうかを見るのではなく、なぜ増えたのか、その増加が売上や利益につながっているかを確認しましょう。

2-5 商品別・販売先別の利益を確認する

会社全体の損益計算書だけでは、どの商品や取引から利益が出ているかまではわからないことがあります。

そのため、可能であれば商品別・販売先別に数字を分けて確認します。

※表は横にスクロールできます

商品・販売方法 売上高 原価 粗利益
商品A
商品B
卸販売
店舗販売

正確な数字をすぐに出すことが難しい場合は、概算から始めても構いません。

まずは、どの商品や取引が利益につながっているのかを把握することが大切です。

3 売上を利益につなげるための改善方法

3-1 商品ごとの原価と利益を確認する

最初に行いたいのが、商品ごとの原価と利益の確認です。

  • ・販売価格
  • ・材料費・仕入価格
  • ・包装費
  • ・販売手数料
  • ・1個あたりの粗利益
  • ・粗利益率

すべての商品を一度に確認するのが難しい場合は、売上の大きい商品や主力商品から始めましょう。

3-2 販売価格を見直す

原価が上がっている場合は、販売価格の見直しも必要です。

ただし、すべての商品を一律に見直すのではなく、利益率の低い商品や付加価値を伝えやすい商品から検討する方法もあります。

3-3 利益率の低い商品や取引を見直す

売上は大きいものの、利益がほとんど残らない商品や取引があるかもしれません。

  • ・販売価格を変更する
  • ・最低注文数を設定する
  • ・配送費を別途請求する
  • ・商品内容や提供方法を変更する
  • ・利益率の高い商品と組み合わせる

3-4 経費を一律に削減しない

利益を増やすために、すべての経費を減らそうと考える場合があります。

しかし、売上や将来の成長につながる経費まで減らすと、かえって会社の成長を止めてしまう可能性があります。

経費を4つに分けて確認しましょう

  • ・売上や利益につながっている経費
  • ・会社の運営に必要な経費
  • ・見直しができる経費
  • ・効果が確認できない経費

3-5 毎月の数字を早めに確認する

決算が終わってから原因を確認するのではなく、毎月の数字を早めに確認することが大切です。

  • ・売上高
  • ・売上原価
  • ・売上総利益
  • ・粗利益率
  • ・人件費
  • ・営業利益
  • ・現金預金

前年同月や計画と比較することで、粗利益率の低下や経費の増加に早く気づけます。

4 決算書の具体例|株式会社あわらベーカリーの場合

ここからは、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」の数字を使って、売上が増えても利益が増えなかった理由を具体的に確認します。

本記事では、決算書の見方をわかりやすく説明するため、架空の会社「株式会社あわらベーカリー」のサンプル数値を使用します。実在する企業の決算数値ではありません。また、税金や会計処理は、説明しやすいように一部簡略化しています。

4-1 売上高は増えている

株式会社あわらベーカリーの売上高は、次のように推移しています。

※表は横にスクロールできます

項目 第3期 第4期 第5期
売上高 24,000,000円 30,000,000円 36,000,000円

第3期から第5期までで、売上高は12,000,000円増えています。

第4期から第5期だけでも、6,000,000円増えています。

4-2 粗利益率は少しずつ下がっている

売上総利益と粗利益率は、次のように推移しています。

※表は横にスクロールできます

項目 第3期 第4期 第5期
売上総利益 14,400,000円 17,400,000円 20,160,000円
粗利益率 60.0% 58.0% 56.0%

売上総利益の金額は毎年増えていますが、粗利益率は60.0%から56.0%へ下がっています。

4-3 人件費と減価償却費が増えている

主な経費は、次のように推移しています。

※表は横にスクロールできます

項目 第3期 第4期 第5期
給料手当 3,000,000円 4,200,000円 5,400,000円
法定福利費 600,000円 800,000円 1,000,000円
水道光熱費 960,000円 1,200,000円 1,440,000円
減価償却費 800,000円 900,000円 1,400,000円
その他経費 2,000,000円 2,300,000円 2,800,000円

4-4 売上が増えても営業利益が増えなかった理由

営業利益は、次のように推移しています。

※表は横にスクロールできます

項目 第3期 第4期 第5期
営業利益 1,160,000円 2,000,000円 2,000,000円

営業利益が増えなかった主な理由

1.粗利益率が58.0%から56.0%へ下がった

2.給料手当や法定福利費などの人件費が増えた

3.設備投資によって減価償却費が増えた

4-5 あわらベーカリーが今後確認したいこと

  • ・商品ごとの粗利益率
  • ・店舗販売と卸販売の利益率の違い
  • ・値上げが必要な商品
  • ・人員増加による売上と利益への効果
  • ・新しい設備による製造量や作業時間の変化
  • ・毎月の粗利益率と営業利益

5 まとめ|売上ではなく利益が残る仕組みをつくろう

売上が増えても利益が増えない主な理由は、次の5つです。

  • ・原材料費や仕入価格が上がっている
  • ・利益率の低い商品や取引が増えている
  • ・人件費やその他の経費が増えている
  • ・販売価格の見直しが追いついていない
  • ・設備投資により減価償却費が増えている

売上高だけを見ていると、会社が順調に成長しているように見えることがあります。

しかし、会社に利益を残すためには、売上総利益・粗利益率・営業利益・人件費などをあわせて確認することが大切です。

また、会社全体の数字だけでなく、商品別・販売先別に利益を見ることで、どの商品や取引が利益につながっているかが見えやすくなります。

売上を増やすことに加えて、増えた売上から利益が残る仕組みを整えていきましょう。

次回は、株式会社あわらベーカリーの数字を使いながら、粗利益率の見方と改善方法について詳しく解説します。

佐々木美有税理士事務所では、月次決算や数字の見える化を通じて、経営者様が会社の状態を早めに確認できる環境づくりをサポートしています。

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